「あるもの」探し

 前回も少し触れましたが、現在のように広島の衰退が顕著になってくると、どうしても「広島はここが遅れている」とか、「広島はここが足りない」みたいな話がたくさん出てきます。

 この状況、個人的には非常に不満です。不満どころか、もはや不快と言って良い。「ここが足りない」「ここが遅れている」みたいな話は、誰だって言える。しかも、正直、「そんなこと言われなくても100も承知」みたいな話ばかり。そして誰も解決策を出さない。出したとしても、「行政がなんとかするべきだ」みたいなものばかり。みんな傍観者で評論家。正直、「違うだろう」って思います。もっと前向きな、建設的な話って出来ないものでしょうか。

 

 私はいつも思うのですが、世間一般的に「広島の弱点」とされているもの。これ、その弱点をひっくり返すと、そのまま「広島の強み」になりますよ。いくつか例示しましょう。

・広島の弱点①「平野が狭い」

 これは昔からよく言われていることです。私も、正直言うと「もう一まわり平野が広い方が良いな」とは思います。が、むしろ、平野が狭いことが長所になっている部分もありますね。一つ目は、山や海が近いこと。登山や森林浴、海辺のレジャーがこんなに身近な街はそうそうないでしょう。

(元宇品。こういうのが当たり前の都市って、そうそうないものだと思います)

 また、産業振興の面から見ても、牡蠣やムール貝といった海産物を始め、山林を見ても、イノシシのジビエだとか、バイオマス発電だとか、様々な産業の可能性を秘めている。広島、まだまだやれることあると思いますよ。

(いつだったか、エキニシで食べたイノシシ・ジビエ。ここ数年で出てきた産業でしょう)

 それに加え、広島は「平野が狭いから相対的に地価が高い」と言われます。そのとおりだと思いますが、これ、地権者からすると「それだけ高い価値のある不動産を持っている」と言うことになります。空家問題を少しでも勉強したことがある人ならわかると思いますが、「高い価値のある不動産を持っている」と言うのは、実は当たり前ではないのです。地方に行けば行くほど、「どうにも活用のしようがない不動産」ばかりで、市場価値がある土地の方が稀。資産が負債になっているような事例ばかりです。広島のような平野が狭い都市では、「市街地にある土地」と言うだけでかなりの価値がある。そういう豊かな資産を持っている人がそれなりにいると思われるこの街。それだけ豊かな街だと思いますね。

 

 また、その土地の話に繋がりますが、広島は平野が狭く、高い価値がある土地が多いがゆえに、必然的にコンパクトシティが整備されていきます。地方に行けば酷いもので、明らかに持て余すような広い土地を、みんながみんな、「せめて自分の土地ぐらいは有効活用したい」と思うものだから(それはそれで間違いではありません)、やたらめったら平面駐車場が多く、ダラダラとした低層の街並みが広がっています。私の実家(福山)周辺のコンビニとか、駐車場だけでフットサルが出来るぐらいの広さがありますよ(笑)。だからこそ、近年は「立地適正化計画」だとか言って、なるべく市街化を抑制しようとしているのですが、これ、そう簡単に行くものかどうか…。それを考えると、平野が狭くて、何もしなくてもコンパクトになっている広島の街。これは強みだと思います。

 

・広島の弱点②「大阪と福岡に挟まれて拠点性が低い」

 これも良く聞く話ですね。「岡山や鳥取の若者は関西に取られ、山口の若者は福岡に取られる」という話です。これもその通りだと思いますが、発想を変えましょう。「大阪や福岡に挟まれているから人が集まらない」ではなく、「大阪や福岡に近いので、そういう大都市からも人を集めることが出来る」です。

 人口の移動、拠点性と言う面では、確かに、「近くに大阪や福岡がある」と言うのはデメリットでしょう。ここは大都市が有利です。でも、一時的な移動(交流人口)を考えた場合は、必ずしも大都市が有利とは限らない。代表的な事例はライブ、コンサートの類です。庄原の山奥の公園で行われるコンサートが広域的に人を集めているのは当たり前の話になっているし、先日の中国新聞では、「福山でももクロがライブをやるのにホテルが足りない」と記事になっていました。一時的なイベントの開催なら、別に大都市でなくても人は集まるのです。大阪、福岡と言う大都市に挟まれている広島の街。逆にそれらの街からガンガン集客しましょう。ジャニーズだろうがAKBだろうが、ビッグアーチ開催でも簡単に完売するでしょうよ。そういうのを狙いましょう。

 と言うことで、「弱点を強みにする」と言う話でした。記事が長くなるのでこの辺りでやめますが、現実的にはまだまだありますね。例えば、よく「広島はIT系の企業が弱い」と言われますが、これは逆を言うと「地元のIT企業に伸びしろがある」と言えるだろう、とも思います。

 いずれにしても、まだまだ広島は捨てたもんじゃない。やはり、一人一人が、出来ることをやっていく。それに尽きると思います。私も、まだまだやれることをやっていこうと思います。評論家になっている場合じゃない、と思います。