広島の人口に関わるウソ? ホント??

 広島県の人口について、最近色々と言われますが、微妙に不正確な情報が多いですね…。

 今回、ちょっときちんと説明したいと思います。

 

広島県は全国ワーストの転出者数である

⇒ウソ

 これは最近、非常に多く目にする間違いです。平気な顔をして「広島県は全国一人口が流出している」とか言う人がいますが、完全に間違いです。

(こういう本とかも、平気で間違い書くのやめてほしい…。わざとなのか、本当にわかってないのか…)

 「嘘つけ。いつぞやの新聞にもそう書いてあったぞ。上の写真の本の帯にもそう書いてあるじゃないか」とか言う人もいるでしょう。よく数字見てください。「転入(出)超過」は全国ワーストですが、必ずしも人口の流出数が全国ワーストな訳ではありません。広島県の転入(出)超過がワーストになった、2021年住民基本台帳人口移動報告年報を見てみましょう。よく比較される、北海道、宮城県、福岡県と比較します。

 転出者数だけを見るなら、北海道や福岡県の方がはるかに多い。「いやいや、元の人口が違うだろ」と言われるかもしれませんが、人口に対する割合を見ても、宮城県や福岡県の方が転出率が高い。広島県は、決して転出者数が多い訳ではないのです。(「少ない」とも言えませんが)

 じゃあどの数値が悪いのか。転入者数が他の都道府県と比較して少ないのです。つまり、野球の試合などに例えるとするならば、「失点が多いイメージがあるが、他県と比較してそう多い訳ではない。問題なのは、点が取れていないことだ」と言うことになります。

 ここ、気をつけておいた方が良いですね。特に最近、まちづくりに意見するときに、「そんなことをやっているから、広島県からどんどん人が離れていくんだ」とか言う人がいますが、そもそもが間違いです。最近見かけた中では、「カッコいいビルを否定して、広島らしさに拘わったりするから、若い人がどんどん広島から人が出ていくんだ」とか、「青少年センターを縮小するなんて、今以上に広島から若者が出ていくじゃないか」とか言っている人を見かけました。政策の是非は置いておくとして、話の前提が間違っています。こういうことを言う人は、大抵が「自分の主張を通したいがために、広島の危機的状況を主張する」ということだけが目的だったりするので、そもそもそう相手にする必要がない人達ではありますが、ちょっと気をつけた方が良い。きちんと数字を読みましょう、ってことです。

 

②広島都市圏の人口は岡山都市圏の人口より少ない。

⇒正しいが、正確ではない。

 都市圏人口を決める際、10%都市圏という基準を使います。母都市への通勤・通学者数が10%以上を占める地域を都市圏とする、という考え方です。この考え方でいくと、広島都市圏は次の範囲になるそうで、人口1,431,634人です。

 一方、岡山都市圏は次の範囲になるそうで、人口1,526,503人だそうです。

 

 あらら。約10万人負けています。でも、もうちょっと良く見てみましょう。東広島市の通勤通学の実態って、どうなっているのでしょう? 次の表のとおりです。

 確かに、広島市への通勤通学は8.71%ですが、広島市に周りを囲まれ、生活圏としては完全に広島市と一体化している府中町への通勤通学者が2,040人もいます。これを加えて良いとしたら、広島市(+府中町)への通勤通学者は10%を超え、東広島市を広島10%都市圏に加えることになり、単純に20万人程度都市圏人口が増えることになります。

 そういう見方をしていくと、「必ずしも広島都市圏人口は岡山都市圏人口より少ないとは言えない」と言うことになります。統計上、どうしてもこういうバグみたいなものは出てくる、ということで、あまり気にするべき話ではない、と言うことになりますね。

 

府中町海田町を加えると広島市の人口はまだ多い。130万人近くになって、福岡市とも引けを取らない

⇒福岡にも似たような町はたくさんある

 先ほど府中町の話をしたので、続きです。周りを広島市に囲まれ、市街地も広島市と連続している府中町海田町。確かにこの界隈は、生活圏としても完全に広島市で、統計上は広島市と一緒に計算するべきかもしれません。そうすると、確かに、人口は130万人近くになります。

(赤い点線区域が広島市域。確かに、府中町海田町は同一の都市圏と言って良い)

 ただ、それを言うなら福岡市も同じようなもの。いや、広島以上に、似たような境遇の町があります。志免町春日市大野城市などを足さないといけないことになるでしょう。そうすると人口180万人程度になります。

(他にも加えて良い町がありそうです)

 

広島市は人が住んでいない山奥まで市域にしており、無理やり人口を稼いでいる。

⇒ウソ

 これは既に数字の問題ではなく、単純に国語の問題ですね。「人が住んでいない山奥」をいくら市域に加えても、面積は増えますが人口は増えません。当たり前ですね。

 実際、旧安佐町、旧白木町、旧湯来町だけで面積は広島市全体の40%を超えていますが、この旧3町の人口は総数で3万人程度です。つまり、現在の市域を60%に縮めても、広島市の人口は115万人を超えます。

(旧安佐町のどこか。当たり前だけど、面積は稼げているが、人口は稼げていない)

 と言うことで、広島県の人口の話でした。ただ、いずれにしても、広島が札幌や仙台、福岡と比較して衰退が激しいのは確か。それぞれが、やるべきことをやっていきましょう。